40周年記念式典の中で、安田孝先生に記念講演をしていただきました。
愛知工科大学学長時代に、病と闘いながら推し進めた教育改革による「愛知工科大の奇跡」の過程を熱く語っていただきました。
【40周年記念講演会】
講 師 : 安田 孝志 岐阜大学名誉教授
(元岐阜大学教授・工学部長・理事・副学長)
(前愛知工科大学学長)
演 題 : 愛知工科大学の新生を果たして分かったこと
「人生はWish,Want & Must(WWM)」
<講演概要>
愛知工科大学(以下AUT)は三河にある数少ない工業系の大学として2000年に開学した。4年後卒業生が就職するようになるが、残念なことに「あそこの大学の卒業生は…」と社会での評価は捗々しくなく、開学当時はそれなりにあった志望者数も発足5年で落ち込み始めた。学生は入学しても失望して1年で辞めていき、応募者も徐々に減っていくという悪循環に陥っていた。このまま手を打たなければ、いずれ応募者がゼロにもなりかねない状況にもかかわらず、目先のことに追われ危機感の薄い大学関係者。そんな状況の中2012年4月、安田先生は学長として着任された。ここからの9年間で「AUTの奇跡」を起こした先生の怒涛の学長人生が始まったのです。
このAUTの“新生”には様々な取り組みが行われました。まず、学生に活力を与え本能を目覚めさせるためのヨット部の創設。これはヨットとともに生きてきた先生の得意分野で、すぐに達成した。次に、学生の心をほぐすだけでなく教育目標を策定して教授方の教育・意識改革に取り組んだ。大学再生のためのリバイバルプランを作成し、それに則してカリキュラムと授業方法・手段などなどの大改革を行うと同時に、優れた活動を行った学生達の学長表彰、学生による授業評価制度の導入など様々な取り組みを行った。その頃、京セラ創業者である稲盛和夫氏と偶然に出会い、リバイバルプランの方向性に間違いがないことを確信する。さらには、60以上の地元企業・高校訪問、地元企業へのインターンシップの実施、大学と地元高校の交流の場であるコンソーシアムの創設など、どん底を経験したから何でもやれたと先生は振り返る。すると徐々に地元企業の評判も良くなり「うちの会社はよそに求人することはない、AUTが第一や」と言う社長も現れた。ついには「就職に強い大学」として全国で20位を獲得、在任期間末頃の2020年には競争率6倍の人気大学に変貌させた。これが「AUTに奇跡が起こった」と言わしめた先生の働きであります。
その一方、改革の光が見え始めた時に肺がんを発症。改革が進んでいくと同時に訪れるがんの再発・転移。余命6か月の宣告。キイトルーダ点滴による奇跡の回復。しかしヨットでの小笠原行の夢を断念。ついには、ヨットの処分。ヨットと共に始まり終わったが、達成感は残った学長生活。
“成功の秘訣は苦しむことと諦めないこと”と言われましたが、大学再生とがん治療の二股苦闘の中でどん底からの這い上がりは、筆舌に尽くし難い9年間であったのではないでしょうか。
「人生はWish,Want&Must(WWM)」
Want ― 欲望
Wish ― 人との共感
Must ― やらねばならぬ強い意志
『誇り高く生き続けるには諦めない努力が必要ですが、
そのためにも自分なりのWWMですね。』 by安田
我々も、自分なりのWWMを持って誇り高く生きていきたいものです。
令和4年11月 文責 S55卒 講演会部会 野々山弘紀